『宇宙線を見てみよう!』のブースに来て頂き、ありがとうございました。 実際に宇宙線である可能性が高い"線"が見て頂けたかというと、正直なところ、難しかったと思います。 見える確率を考慮すると、ほんの数人の運の良い方だけだったと思います。
その宇宙線(ミュー粒子とも言います)ですが、ざっくり、手のひらに1秒間に1個という頻度で飛来しています。 次の動画を見るとそのイメージが分かると思います(最初の数十秒だけで少し見てみてください)。
これは、スパークチェンバーという機器で、宇宙線が、ブツブツと言う音とともに光の線として観察できています(ちなみに、霧箱は、横文字ですと、クラウドチャンバーです)。 宇宙線が、スパークチェンバー内の気体(ヘリウム)を通過するときに、ヘリウムを電離(電子と、プラスの電荷をもった分子)して、そのの電子に電圧をかけることで、電子を加速し、さらに、その電子がヘリウムを電離していって、放電することになります。 霧箱での飛行機雲にあたるものが、スパークチェンバーでは、放電による光になります。
ここで、少し注意してもらいたいのは、これを見ると、宇宙線は上から来ているように見えますが、斜めからも、量は少なくなるものの来ていることです。 霧箱では、エタノールの雲ができる領域は平面状ですので、この斜めから来くる宇宙線を、『長い細い線』として見ることができます。 ここで、人によっては、「でも、上から来る宇宙線も短いけど見えるんじゃないの」とするどいことを思う方もいると思います。
そうです。見えます。ただ、それが、宇宙線かどうか、というのは、他の可能性があって、分からないのです(このような場合、科学者は、他の原因でできる線を、バックグラウンドと言ったりします)。 その可能性となるものが、自然放射線と言われるものです。今、目の前にある空間にも、空気(窒素、酸素)だけでなく、実は、ほんの少し放射性物質があります。
その1つは、ラドン222という放射性物質で、このラドン222がアルファ線(陽子2つ、中性子2つ)という放射線を出します。 これが、1立方メートルで約10ベクレル(1秒間に1回放射)という量なので、ざっくり計算すると10立方センチメートルなら1分間に1個程度となります。 これもやはり、上下方向に飛ぶと見えないですから、左右方向に飛んだときだけ見えます。 そうすると、実際に霧箱で見えるは数分間に1回という頻度になります。
2つ目は、カリウム40という放射性物質で、このカリウム40がベータ線(電子)、ガンマ線(光子)という放射線を出します。 これもやはり、上下方向に飛ぶと見えないですから、左右方向に飛んだときだけ見えます。
次のリンクに、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、宇宙線の写真があります。 本当は、このようなものを実際に見て頂きたいと思ったのですが、限られた時間の中では難しいことがあったかと思います。 次回は、より見やすいように工夫して、科学の祭典に出展したいと思いますので、また、お時間ありましたら、ぜひ、ご訪問ください。
最後に、補足の補足の補足なんですが、『宇宙線』という言葉は非常に曖昧です。 今回見て頂いた『宇宙線』は、実際は、『ミュー粒子』と呼ばれているものですが、そもそも、『宇宙起源の粒子は全てそう言う』というところもありますので、実は他にもたくさんあります。 聞いたことあるようなもので、ニュートリノや、高エネルギーガンマ線などがありますが、それはまた、別の機会ということにしたいと思います。
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