引用)P280, 高等学校 物理, 数研出版, 平成4年(1992)
天然の放射性同位体から出る放射線には, α線・β線・γ線の3種類がある。
α線は高エネルギーのヘリウム原子核 $^4_2\mathrm{He}$ で、α粒子と呼ばれる。
β線は高エネルギーの電子, γ線は波長がほぼ $10^{-11}m$ 以下の電磁波である。
さて、ここまでで、α線、β線、γ線、X線という言葉が出てきました。
実は、X線は、γ線の波長が3桁分大きい範囲の電磁波です(さらに波長が大きくなると、紫外線、可視光線と続きます)。
ここまでは、比較的一般的に知られていることだと思います。
しかし、実は、現在、放射線という言葉は、少し広い意味で使用されています。
今度は、物理学辞典を参照してみましょう。
引用)「放射線」の項目の冒頭、物理学辞典1995ページ、培風館, 2002年4月20日改訂第5刷
最初はレントゲンが1895年に発見したX線, ついで自然放射性元素から放出されるα線, β線, γ線のことであったが, 現在では, エネルギーをもって運動している素粒子, 原子核, 光子などを総称して放射線とよんでいる.
線とよばれるのは, 粒子の流れに方向性が認められるのが普通だからである.
また、この1900年前後、箔検電器が放射線の観測に使用されていました。
この箔検電器が、放射性物質の無いところでも、閉じる(電気が無い状態、放電)ことが知られていました。
このことは、後に、宇宙線の発見に繋がります。
これで放射線の歴史の前半戦終了です。
実は、α線、β線、γ線というのは比較的発見しやすいものでした。
というのは、これらの放射線は、磁場や物質と、何かしらの反応をしやすいものです。
また、新しく実験施設に加わったものです。
しかし、反応が薄い放射線、既に身の回りにある放射線もありました。
次はそのような放射線を見ていくことになります。
ところで、中性子が発見された1932年は、昭和7年になります。
1929年に始まった世界恐慌により、日本も昭和恐慌となりました。
この年は、5.15事件により犬養毅が暗殺されるという事件が発生しています。
チャドウィックの中性子の発見から6年後、
オットー(名)・ハーン(姓)
らが、中性子をウランに照射するという実験で、核分裂を発生させました(同じような実験をエンリコ・フェルミも行っています)。
ウラン化合物が、放射性物質ということは、
第2幕
で見てきましたが、そもそも、なぜ放射性物質かというと不安定な原子だからです。
不安定な原子だから、放射線を出すし、放射線に対して簡単に壊れてしまうということになります。
ここで、もし、分裂した原子がさらに放射線を出すような場合、連続的に放射性物質を生成して、かつ放射線を出すことになります。
放射線はご存知の通り、エネルギーを伝えることができます。
そして、それを連続的に制御することができる可能性がここに判明しました。
言わずと知れた、原子力発電や原子爆弾の原理です。
本来なら、多くの物理学者・放射線科学者は、より世界を知りたいという好奇心で研究していたはずです。
しかし、この世界を知るための知識や技術はどんどん発展し、極めて大きい実益や力を掘り起こす可能性も増大しました。